Claude Fable 5 と Opus 4.8 を実測比較|正確性は同点、差は「検証の深さ」とコスト

2026.07.12 約 16 分で読めます

最上位の claude-fable-5 と、その半額の claude-opus-4-8。同じ勤怠集計ツールを同じ条件で作らせて試したら、正確性は同点でした。日跨ぎの深夜も、週残業の非二重計上も、両者そろって全問正解。何が違ったのか。1回分の実測データと、両モデルが実際に作ったツールの画面を、そのまま見せます。

結論:素の正確性は互角、差は「自発的な検証の深さ」とコスト

先に数字を置きます。勤怠集計は、正解が一意に決まるのに、事故が起きやすい箇所が多いタスクです。両モデルに同じ条件で走らせたところ、肝心の計算はどちらも 100% 一致でした。差がついたのは、頼んでいないことをどこまで自分で確かめにいくか——その一点でした。

指標(1試行の実測)Claude Fable 5Claude Opus 4.8
計算の正確性(サンプル+隠しケース 40マス)100%(40/40)100%(40/40)
採点合計(100点満点・独自採点)10090
消費トークン84,86058,255
所要時間約10分約5分
ツール実行回数157
単価(/100万トークン)入 $10 / 出 $50入 $5 / 出 $25
計算の正確性は同点。差は採点で10点・トークン・時間・単価に出た(数値は log 由来・1試行の実測)。

採点で開いた10点差は、正確性ではありません。「自己検証」「コード品質」「不正データへの強さ」から出ています。正解を出す力は並んだのに、その正解を自分で疑って固める工程で、差がつきました。そう読むのが正確です。全体像を1枚にまとめました。

Fable 5 と Opus 4.8 の比較サマリー図。正確性は両者100%で同点、差は採点合計100対90・トークン84860対58255・時間10分対5分・単価2倍に出ている
正確性は同点。バーで見ると、Fable は品質と引き換えにトークン・時間・単価を余分に使っている。

実測の設計:同じ勤怠ツールを素の状態・同条件で両モデルに

比較で、いちばんずるいのは、条件をそろえないことです。今回は変数をモデルだけに絞りました。同一プロンプト、同一の空ディレクトリ、そして素の状態(追加のルールやスキルを何も足していない状態)。わたしがふだん使っている自作の開発ルール(進め方の取り決めを1ファイルにまとめたもの)や検証用の手順は、あえて渡していません。この素の状態で claude-fable-5claude-opus-4-8 を並列に走らせ、両方の出力を計測しました。使ったのはどちらも 2026-07-12 時点の最新バージョンです。

お題は勤怠集計ツール。総務担当が打刻データを貼り付けると、日別の実働・残業・深夜と、週(月曜起点)の残業を出す小さなアプリです。地味に見えて、事故が起きやすい箇所があります。日跨ぎ勤務、早朝深夜、週40時間超の残業を日残業と二重計上しない処理——このあたりで、素朴な実装はぽろぽろ取りこぼします。

この比較のキモは、採点を自己申告に任せないことです。正解はわたしが先に手計算し、参照実装(reference.mjs)で機械でも検算しました。そのものさしを、結果を見せる前にそろえておきます。

採点のものさし:何を測って、どう点をつけたか

「正確」と呼ぶ基準がぶれると、比較そのものが意味を失います。だから先に、測り方を決めておきました。

  • 「正確性」の定義:各日の打刻から「実働・所定内・日残業・深夜」の4つを、分単位で計算させます。わたしが先に手計算した正解と、一致したマスの数で測ります。サンプル6日 × 4項目 = 24マスに、週の4項目を足したもの。すべて合えば満点です。
  • 採点のやり方:会計で期待値を先に出しておくのと同じ発想です。わたしが正解を先に手計算し、両モデルが書いたコードにテストデータを流して、答えと突き合わせました。モデルの自己申告スコアは使いません。

採点合計は100点満点の独自採点です。内訳はこうしました。

採点軸配点何を見るか
正確性(日)40日別4項目 × 6日の一致数
正確性(週)20週の4項目の一致数
自己検証15実際に動かして、自分で確かめたか
完遂10質問で止まらず、動く形になったか
コード品質10読みやすさ・境界の処理・一貫性
不正データへの強さ5あり得ない打刻で破綻しないか
採点合計100点の内訳。正確性だけで60点、残り40点が「どこまで自分で固めたか」。

結果①:計算の正確性は同点だった(両者 24/24)

ここは正直に書きます。「最上位の Fable が難しい所だけ拾って差をつける」——そんな絵を少し期待していたのですが、外れました。判別力が高いと踏んでいた項目まで、Opus もすべて当ててきます。

打刻難所正解Fable 5Opus 4.8
木 22:00→翌6:00日跨ぎ深夜深夜 420 分
金 01:00→09:00早朝深夜深夜 240 分
週合計週残業の非二重計上週残業 300 分
隠し 20:00→翌20:00(休憩60)24時間勤務深夜420 / 日残業900
素朴な実装が取りこぼしやすい、判別力の高い項目。サンプル・隠しケースとも、両モデルが全一致。

サンプルの日別24マス、週の4項目、後から流した隠しケース12マス。合計40マスが両モデルとも完全一致でした。仕様がはっきりしていれば、計算の精度でモデル差は出ませんでした。この比較で分かった、いちばん地味で大事な事実です。ここを誇張して「Fable だけ正解」と書くのは、事実に反します。

結果②:差が出たのは「頼んでいない検証と堅牢化」

計算が同点なら、10点差はどこから来たのか。両モデルの aggregate.mjs に、プロンプトで渡していない、いじわるなデータをあとから流してみました。複数週をまとめて渡す、休憩が在社時間を超える不正データ、25:00 という存在しない時刻。出てきた結果がこれです。

======== FABLE ========
multiWeek week= {"weekStart":"2026-06-01","regularSumMin":1440,"weeklyOtMin":0,"totalOtMin":0}
multiWeek has weeks[]? true len=2   各週 weeklyOt=0(正しく週ごとに分けている)
negBreak THREW: 2026-06-01: 休憩 600 分が在社時間 180 分を超えています
badTime(25:00) THREW: 2026-06-01 の in "25:00" は 00:00–23:59 の範囲外です

======== OPUS ========
multiWeek week= {"weekStart":"2026-06-01","regularSumMin":2880,"weeklyOtMin":480,"totalOtMin":480}
multiWeek has weeks[]? false        ← 1つの週にまとめて合算し weeklyOt=480 を誤集計
negBreak worked= -420               ← 休憩>在社を検知せず、実働が負のまま
badTime(25:00) THREW: 時刻の値が範囲外です: "25:00"

見どころは2つ。1つ目は、複数週の扱いです。両方の aggregate() に複数週を直接渡すと、Opus はすべてを1つの週にまとめて合算し、週残業480分をでっち上げました。渡したサンプルは1週ぶんなので、その範囲では正しく動きます。Fable は週ごとの配列(weeks[])を返し、各週を分けて残業を0にしていました。ちなみに Opus も index.html 側では週を分割して表示するので、画面としては破綻しません。計算部分が単独で堅いかどうか、という差です。

2つ目は、休憩600分・在社180分という「あり得ない打刻」。Opus は Number(r.break) || 0 で黙って受け取り、実働を -420 のまま返します。負の実働がそのまま集計に混ざるわけです。Fable は在社時間より休憩が長い時点で、日本語のメッセージを出してエラーで止めます。25:00 のような不正時刻は、どちらも弾きました。時刻の範囲チェックは Opus も入れています。

自己検証の作り込みも差がありました。Fable は16本のテストを自分で書きました。ISO週の境界、年をまたぐ週、不正な入力9種などです。さらに、実際のブラウザで index.html を描画してスクリーンショットまで取り、aggregate.mjs と HTML 内の計算ロジックが1文字も違わないことも機械で確認しています。Opus は node でサンプルと数件の境界を確認し、HTML と mjs のロジック一致はコードを読んで確認。ブラウザでの実描画は「やっていない」と正直に申告していました。頼まれてもいないのに実物を動かしにいくか。ここが Fable の色でした。

画面にも性格が出ます。Fable は集計表に加えて、勝手に「時間帯ストリップ」を足してきました。0時から翌6時までの時計の軸に、在社の帯と深夜の帯を重ねて描く小さな図です。木曜の 22:00→翌6:00、金曜の 01:00→09:00 の深夜が、総務担当の目で見て確認できます。

Fable 5 が作った勤怠集計ツールの実画面。日別表の右端に、0時から翌6時の時計軸へ在社帯と深夜帯を描いた時間帯ストリップが並ぶ
Fable 5 版。右端の「時間帯ストリップ」で、日跨ぎ・早朝深夜が目視できる(頼んでいないのに付いてきた)。

Opus 版はどうか。こちらは可視化こそ足していませんが、日別表に H:MM と生の分数を併記し、合計行とサマリーカードで数字をきれいに見せます。集計結果は正解とすべて一致。派手さはないぶん、読み違えようのない実直な作りです。

Opus 4.8 が作った勤怠集計ツールの実画面。日別表に実働・所定内・日残業・深夜を H:MM と生分数で併記し、合計行とサマリーカードを表示
Opus 4.8 版。可視化は無いが、生分数併記・合計行で数字が読みやすい。値は正解表と完全一致。

コードの手ざわりも、Fable は守りが堅い作りでした。中核の計算を __CORE_START__ / __CORE_END__ という印で囲って HTML と共有しています。JSDoc(コードに付ける説明)と名前付きの定数で、意図もコードに残していました。Opus はきれいで読みやすいものの、Number()||0 のような静かな型変換で、不正な値を吸収してしまう場面があります。動くコードとしてはどちらも合格。壊れにくさで一段、差がつきました。

結果③:コストと速度は Opus が明確に有利

深く検証するぶん、Fable は時間もトークンも使います。今回の1試行では、消費トークンが 84,860 対 58,255。Fable が約1.46倍です。所要時間は約10分対約5分で、こちらは約2倍。ツール実行回数は15対7でした。単価はもともと Fable が Opus のちょうど2倍です。

項目Claude Fable 5Claude Opus 4.8
入力単価(/100万トークン)$10.00$5.00
出力単価(/100万トークン)$50.00$25.00
コンテキスト1M1M
最大出力128K128K
thinking常時ON(要約のみ返る)adaptive(明示ONで作動)
料金・スペックは claude-api の資料の値(2026-06-24 時点)。

単価は Anthropic 公式の料金ページでも確認できます(platform.claude.com・本記事の値は claude-api の資料の 2026-06-24 時点)。この単価2倍に、トークン約1.46倍をかけ合わせて比較すると、同じタスクの実コストはおおよそ2〜3倍という概算になります。これは計測ツールが出した合算トークンを、代わりの目安にした推定です。入力と出力の単価差までは、厳密に分けていません。それでも方向ははっきりしています。Fable は高くて遅いぶん、自分で深く確かめます。Opus は安くて速く、想定どおりの入力なら精度も的確です。ただ、堅牢化や実物の確認は、はっきり頼まないと薄くなりがち——この1回の実測は、そう読めました。

Fable の「深さ」はどこで効くのか

正確性が同点なら、わざわざ2倍払う意味はどこにあるのか。今回の結果を並べると、効きどころは絞れます。仕様が曖昧で、渡したサンプルの外まで自分で想定してほしいとき。一発勝負で、あとから手直しする余裕がないとき。数分から数十分をひとりで走り続ける、長時間の自律作業。こういう場面では、Fable の働き方がそのまま効きます。頼まなくても実物を動かし、不正なデータを想定し、サンプルの外まで確かめにいく姿勢。これが後工程の手戻りを、まるごと消してくれます。

逆に、この深さが向かない場面もあります。仕様がかっちり決まっていて、レビュー工程が別にあるなら、毎回2倍払う効果は薄くなります。ここは次回、もっと大きなお題で確かめます。Fable に会計 freee 相当のアプリを1セッションで自律完成させたとき、この検証の規律が最後まで持つのか。それが連載②のテーマです。

どっちを選ぶ:用途で割り切る

1回の実測から言える範囲で、選び方をまとめます。断言しすぎない程度に。

  • 難関を一発で・長時間の自律作業なら Fable 5:仕様が曖昧、堅牢化まで任せたい、途中で人が見られない——そんな条件のとき。自発的に実物確認まで走る性格が、そのまま品質になります。
  • 量産・コスト重視なら Opus 4.8:仕様が明確、レビュー工程が別にある、同じ処理を数多く回す用途。半分の時間と約7割のトークンで、同等に正しい計算が返ってきます。
  • 迷ったら:まず Opus で作り、堅牢化・実物の確認・サンプル外の検証を、はっきり指示するのがおすすめです。それで足りない難所だけ Fable に回すと、コストと品質のバランスを取りやすくなります。

大事なのは、Opus が「弱い」のではないこと。はっきり頼めば、範囲チェックも週分割もちゃんと入れてきます。今回は「頼まなかったときに何が残るか」を測ったので、自発性の差が前に出ただけです。こういうモデル選定やベンチ設計を自社の開発で詰めたい場合は、導入支援・技術相談も受けています。今回の勤怠集計ツールは、仕上げて 無料ツール置き場 に並べる候補にしています。

次回予告

この①は素の状態・同条件での比較でした。ここから2本つなげます。

  • :Fable に会計 freee 相当のアプリを1セッションで自律完成させる記録。今回見えた「頼まなくても検証する」規律が、大きなお題でも最後まで持つのかを見ます。
  • :Fable の仕事の進め方(段階を踏んで計画し、実物で確かめ、詰まったら仮説を立てて直す)を、手順と確認項目にまとめて Opus に持たせ、マーケ用のショート動画を作るツールという新しいお題で再戦。プロンプトで細かく指示するのではなく、工程ごとの合格条件で検証を踏ませたとき、Opus が Fable の深さに届くかを比較します。

ほかの実装・精度検証の記事は AI・LLM開発 のカテゴリにまとめています。②③は公開後に、ここへ相互リンクを張ります。

こま

こま

元SE × AI開発 × 業務自動化の実践者

SE 4年 + プログラミング歴 8年。業務自動化と AI 組み込み開発を仕事にしながら、現場で使えるものだけを書いています。 最新のAIの現場を発信中!!